miya-rithumei’s blog

紫微斗数という命運分析で人生の様々なご相談に応じています。

神様の遣い(8)

神様の遣い(8)

 

幼少期から親からの虐待や、小学校での先生からの暴力で涙の日々が多い早苗さんですが、同級生の中で唯一親切にしてくれた友達が居たことは救いでした。

 

前回までの記事

https://ameblo.jp/miya-ritumei/entry-12412284612.html

 

 

----- 小学校の友達のお母さん -----

早苗は学校が終わって帰りがけに、同級生の美代ちゃんに誘われ彼女の家に寄っていくことになりました。

 

美代ちゃんのお母さんは働きには行っていなくて、いつも家に居てくれるようです。美代ちゃんの家に行くのは初めての早苗でしたので、心臓がドキドキです。

学校から歩いて15分ほどの所に有る美代ちゃんの家は、小ぢんまりとしてはいるが、まだ新しく洋風の作りの白い家でした。道からドアに入る小さな庭先には雑誌で観るような鉢植えが幾つも並んで、見ているだけでもウキウキする気分になります。白い玄関ドアを開けて入ると、家の中も綺麗に片付いています。

早苗の家の中とは大違いです。

早苗の家は古い長屋住宅のようなところで、玄関の戸も開ければガラガラと音を立てる引き戸で、途中で何回も引っかかってスムースには開けられない戸です。

一歩入った家の中も不要なものが床に置きっぱなしになっている状態で、居間も所狭しと本や脱いだ衣類が積み重なっています。

畳は擦り切れて綺麗なズボンにも畳の屑が付くほどです。

 

美代ちゃんの家に入ってリビングに通されて、早苗は改めて部屋の中を見回してみると、食器棚もレストランみたいに綺麗なもので、棚の中には可愛い食器が並んでいます。

 

「まあ、早苗ちゃんね? よく来てくれたねえ、いつも美代から早苗ちゃんの話は聞いているのよ」

そう言って美代ちゃんのお母さんはキッチンから微笑みながらリビングに入ってきました。

「さあさあ、ランドセルは置いて、おやつにしましょ。用意しておいたからね」

美代ちゃんのお母さんは、すでに用意してあったお菓子とココアをテーブルに二人分揃えてくれました。

早苗は美代ちゃんと二人並んで、表面がピカピカ光るテーブル着きました。お母さんは向かい側の椅子で、早苗の顔を微笑みながらじっと眺めています。

美代ちゃんのお母さんにジッと見詰められるだけでも、嬉しくなってしまった早苗は、とても幸せな気分です。

嬉しくて早苗もニコニコしてしまいました。

出されたお菓子は早苗が食べたこともないし、初めて見るお菓子です。

手に取ってじっと見ていると、美代ちゃんが、

「このお菓子はクッキーって言うのよ、お母さんの得意なお菓子なの」

「くっきー?」

早苗は不思議そうに、そっと口にしてみました。

口に入れて少し噛むと、ポロっと口の中で砕けて、不思議な甘さが広がっていきます。

早苗にとっては不思議な美味しい初めての体験です。

物凄く高級なお菓子を食べた気分です。

「美代ちゃん、このお菓子って、毎日食べれているの?」

「うん、お母さんはお菓子作るのが大好きなの、いろんなお菓子を作って、私に実験台みたいに食べさせるの」

「へー、いいなあ、こんなの毎日食べれるんだ」

早苗は美代ちゃんのことが羨ましくて、どうしようもなくなりました。

早苗の家では、そもそも「おやつ」などという習慣は有りません。

「おやつ」という言葉は、本か何かで観たことは有りますが、美代ちゃんが美代ちゃんの家で「おやつ」という習慣が日常に成っていることが不思議でした。

さらに、とっても甘いココアも早苗にとっては初体験です。

世の中にこんなに甘くて美味しい飲み物が有るなんて知りませんでした。

改めて自分は、なんて貧乏な寂しい家に生まれたのだろうと涙が出てきてしまいました。

「あら、どうしたの? 早苗ちゃん涙なんか流して、おばさんが何か気に障ることでも言ったのかしら?」

「ううん、おばさんが優しくて、こんなに美味しいものを食べさせてくれて嬉しくて…」

涙と鼻水が、すするココアと混ざって変な味になってしまいます。

「まあ、そうなの? こんなもので早苗ちゃんのお口に合うか心配だったのよ。美代なんか、もうクッキーは嫌だっていうんだもの」

 

おやつを食べ終わったら、美代ちゃんのお母さんは、

「ねえ、宿題あるんでしょ? おばさんと一緒にやりましょ? 美代は一緒に宿題をやらないと自分では始めないの、早苗ちゃんもやろう?」

そう言って、お母さんは早苗たちの宿題を手伝ってくれるのだった。

早苗は宿題すら家では、一人でやるしかなく、父親が帰ってくる前に片付けておかないと、教科書すらも破られてしまうからだ。

 

宿題も終わって、早苗と美代ちゃんはテレビアニメのビデオを一緒に見始めました。もちろん早苗の家にビデオ装置など有る訳が無いです。

床のふかふかの毛の絨毯の上にひっくり返って二人でビデオを見ていると、

「あら、早苗ちゃん。シャツのボタンが取れそうよ」

美代ちゃんのお母さんは早苗のシャツのボタンを指で摘まんで言いました。

「おばさんが直してあげるね」

おばさんはそう言って裁縫道具を出してきました。

「早苗ちゃん、おばさんがシャツのボタンを治す間、このシャツを脱いで美代のトレーナーを着ていてね」

そう言って、美代ちゃんの赤いミッキーマウスのトレーナーを出してくれました。美代ちゃんのトレーナーを着た早苗は、またまた涙が出てきてしまいました。こんなに可愛いトレーナーは一度でいいから来てみたかったのです。

クラスでも一番に小さい早苗は、美代ちゃんのトレーナーは少し大きくて、袖から手が出ないけど、モコモコの温かい感触が何とも言えない優しさを感じさせました。

また、そのトレーナーは不思議な良い香りもします。甘い香水のようで爽やかな香りです。洗剤の香りでしょうか、それともお母さんのコロンでしょうか、早苗の家では有り得ない香りです。

 

「早苗ちゃん、前のボタンは直したけど、袖口のボタンが無くなってしまってるよ。違うボタンだけど、とっても可愛いボタンが有るから左右の袖口を一緒に替えてあげるけど、大丈夫?」

「うん、大丈夫、でも、おばさん、ボタンを貰ってしまっていいの?」

「いいわよ、おばさんには、いっぱい色々なボタンが有るから」

 

美味しいおやつも食べさせて貰い、宿題も、シャツも直してもらい、楽しいアニメのビデオも見せて貰って、早苗は極楽に行った気持になりました。

美代ちゃんの家での時間は、あっという間に過ぎていきます。

自分の家に帰ると寂しい嫌な現実があります。

 

それでも、それからは頻繁に、早苗は美代ちゃんの家に寄って、宿題も済ませたり、おやつやビデオも楽しませて貰うようになりました。

 

美代ちゃんのお母さんは、早苗を自分の子供のようにして、接してくれました。

毎日の学校の辛いことも、嬉しいことも、何でも話を真剣に聞いてくれました。また様々なことでも早苗を褒めてもくれました。

「偉いわねえ~早苗ちゃん」

そんな言葉は生まれてから一度もかけられたことは有りません。

早苗が当たり前のように聞く言葉は「バカヤロー、お前は何というダメな奴だ」

こんな言葉に慣れてしまった早苗は、美代ちゃんのお母さんの言葉には毎回涙を流しました。

「この世に、私のことを認めてくれる人が居る。私は生まれて来ても良かったんだ」

 

そんなある日、早苗が家で脱いだ服を母が手に取って怒り出しました。

「早苗! この服のボタンはどうしたんだい?」

早苗はニコニコしながら答えました。

「美代ちゃんのおかあさんが直してくれたの。今までにも時々、あたしのシャツの破れた所を直してくれたり、無くなったボタンを付けてくれたの」

それを聞いた母の顔がにわかに険しくなりだした。

「何だって! 他所のおばさんに直して貰ったのかい? お前はまったく、どうしようもないねえ、お前は本当に恥さらしだ! なんだって家に中の恥を他所でさらすんだ! こんな事をされたら、私は何にも出来ないダメな母親を宣伝してるのと一緒じゃないか!」

そう言って、母親は早苗の頬に平手打ちを食らわしたのです。

「もう二度と美代ちゃんの家には行くんじゃないよ、いいね? 分かったね?」

 

しかし、早苗は密かに美代ちゃんの家に立ち寄り続けました。

でも、洋服の直しなどは断るようになりました。

美代ちゃんのお母さんは、

「そうなの? じゃあ、おばさんは早苗ちゃんに悪いことをしてしまったね。じゃあね、成るべく分からない様に、直すからね」

 

早苗は今になって思えば、小学校の時に、このおばさんに出会えたことは、その後の辛い人生を生き抜いていくことの、大きな支えになっていたと思いました。

 

 

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神様の遣い(7)

神様の遣い(7)

 

早苗さんのお父さんは、家では酒を呑んで怒鳴る、暴れるの、どうしようもない人だったようですが、一歩外に出ると大人しくて、優しくて、親切な割合に評判の良い人だったようです。

ただ、職場では「梲(うだつ)の上がらない」のが面白くなくストレスを溜め込んでいったと思われます。

お父さんの命盤の解説については、またの機会に譲りたいと思います。

※(梲=商家などで隣家との境に設けた防火壁。これを高く華麗に掲げて繁栄のしるしとする[明鏡国語辞典 第二版])

 

前回までの記事

https://ameblo.jp/miya-ritumei/page-2.html

 

 

----- 小学校、唯一の友達の想い出 -----

初めての同級生の誕生日に、ほぼクラスの全員が招待されたのに、早苗は母の一言で参加を諦めなければ成らなくなりました。

参加しない理由も母の言う「参加すれば、お返しに自分の家でも誕生会をやらなきゃならん、そんなことは出来ないよ」

そんな理由では、友達に断れなく別の嘘をついて断った早苗は、その後も苦しい思いを抱えて過ごしていた。

誕生会の後も、クラスでは友達の誕生会のことで暫く盛り上がっていました。そんな時も早苗は話の仲間には入れず、教室の隅っこで独り孤独感を募らせていました。

 

それでも日にちが過ぎると教室は平常時に戻り、早苗の唯一の誕生会の友達ち「美代ちゃん」も、早苗に今までどおりに接してきてくれるようになりました。

 

そんなある日、美代ちゃんは学校が終わって帰りがけに早苗に声をかけてきました。

「早苗ちゃん、今日は何か用事が有るの? もし用事が無かったら、今からあたしの家に寄って行かない?」

早苗は美代ちゃんの誘いに、それまでずっと曇り空だった気持ちが一気に晴れ晴れして軽くなりました。

「うん、行く、行っていいの?」

「うん、じゃあ、このまま一緒にあたしの家に行こう」

「うん」

早苗はスキップ踏みたい気分で、美代ちゃんと手をつないで走り出しました。

 

 

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自分はまとも人間で常に正しい?

 

「自分はまとも人間で常に正しい」と思っているようなことは有りませんか?

もし、こんな風に思っている人が居たら、ちょっと考えてみてください。

 

あなたの周囲に、大人しくて、自己主張もせず、要領は悪いが生真面目で仕事は一生懸命している。だけど、その人に腹が立つようなことは有りませんか?

 

そんな時、あなたは「俺は(私は)、正しくてまともだ(正しい)、あいつは普通じゃない」と思ったりしませんか?

 

会社の上司や学校の先生などの貴方は、部下や生徒の中に「標準的でない人」が居たら、どう思いますか?

普通の人に言うように指示を出しても理解できない、トンチンカンのことをしてしまう、覚えが悪く何度も指示を出さないと成らない、普通の人に出来ることが何故か出来ない、そんな人に貴方は腹が立って懲らしめてやりたいと思いませんか?

 

実は貴方が、腹の立つタイプの人であれば「特別な個性」の持ち主の可能性があります。この「特別な個性」は最近では「発達障害」などと呼ばれています。

もし、貴方が「発達障害」のことを特別な病気と思っているのでしたら、それは大きな間違いです。

「自分はまともで正しい」と思う貴方こそ発達障害の可能性があります。

まして、腹が立ったり、懲らしめてやろうと思うなら、確実に発達障害でしょう。一度「発達障害チェック」を受けられることをお薦めします。

 

そもそも発達障害とは「脳が異常」と思うこと自体が間違えています。極端な言い方をすれば誰でも持っているのが「発達障害」です。

発達障害という名称が、そもそも誤りなのです。

個性のことを「発達障害」名付けたことが大きな問題です。

世間で「発達障害」と云われることは「個性の違い」なのです。

 

世間で「発達障害」と云えば、人とのコミュニケーションが出来ない、拘りが強く普通のことが出来ない、考え方が変わっている、などと云われます。

そして社会で酷い目に遭うと引き籠ってしまうと思われています。

 

でも、実は強い「発達障害」を持っていても社会に出て地位が上の人もいます。それらの人たちに共通しているのが、性格が強い、負けず嫌い、何か有れば人を負かしてしまうほどの攻撃性がある、腹が立てばキレル。

性格に問題が有っても人格者に思われていて、人を統率する能力が有る人たち、そのような人たちには弱者を思いやる気持ちが微塵もない人たちが居ます。

これは正に発達障害の持ち主と云えそうです。

このような人たちに限って、自分と違うタイプの人に対して差別的な言動や態度を示します。そして常に「自分は普通で正しい」と思い込んでいます。

『神様の遣い』で早苗さんに酷い暴言、暴力を振るってきた父親、姉さん、学校の先生たち、みんな「発達障害」なのです。

人格者にも多く潜んでいる「発達障害」です。

 

発達障害は病気や障害ではなく、単なる個性の強弱なので、誰でも少なからず必ず持っています。要は発達障害というのはグレーゾーンの広い個性と云えます。しかも発達障害というものは、二つや三つの個性を指して居る訳では無く、何十という様々な個性なのです。ですから、人格者であって大きな組織の長であって業績を残していても、特別な個性が有り知る人ぞ知る問題を秘めていることだって珍しくは有りません。

この発達障害と云われる個性は、本人はまったく気付かないことも多いのです。それだけに厄介です。誰でも自分はまともと思っているからです。

偉い学校の先生だって暴力を振るったり、暴言を吐くようなら確実に発達障害が有ると思って間違いないでしょう。

 

さらに言ってしまえば精神科の医師ですら発達障害を持っている場合もあるのです。大学の教授だって発達障害を持っている可能性が有ります。

 

ですから、部下や生徒のことを「どうしようもない馬鹿」と思っている貴方も発達障害の可能性が強いのです。

こんな記事を書いている私も発達障害ですから、申し訳ありません。

■参考記事

www.sankeibiz.jp

【なぜ日本は「発達障害大国」なのか】

 「発達障害を考えるとき、思い出してもらいたいのは童話の『みにくいアヒルの子』です。白鳥なのにアヒルの群れに入ってしまった、それが発達障害の人が置かれた状況。どんなに頑張っても白鳥はアヒルにはなれません。『努力してアヒルになれ』と叱咤激励しても、アヒルのようには鳴けず、結局、白鳥の子は白鳥にしか育ちません。白鳥には白鳥だけができることがあるはずで、その得意な分野を活かしていけばいいんです。僕は一当事者としても、声を大にしてこういいたい。『発達障害ライフを楽しもう』と」(本田氏)

 

 

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神様の遣い(6)

神様の遣い(6)

 

早苗さんは幼少期からお父さんには怖い思いをして育ちました。

そんな怖いお父さんですが、大人になってから同級生のお母さんから聞いたお父さんの話があります。

 

前回までの記事

https://ameblo.jp/miya-ritumei/entry-12410871653.html

 

 

----- お父親さんの事 2 -----

早苗の父親は家では大変に頑固で暴力的な父親ですが、いたってご近所の評判は良いようでした。

早苗の父親の職場で知る人の話では、「大人しくて、親切で、冗談も良く言う」そうです。むしろ、何かを人に頼まれでも断ることが出来ないくらいに従順な人のようでした。

上司にも頭が上がらず、常に下積みのような仕事をさせられていたとも言っていました。

そのような状態で、父親は同じ職場に7年近く勤めていたようです。

しかし、8年目ごろから上司との折り合いが悪くなり、仕事に行くのを嫌がり始めました。

朝は普通に出勤して行くのですが、夕方は退社時間より早めに帰って来るようになり、その時にはすでに酒臭くなっていることも増えました。

早苗の姉さんが父親に「父さん最近は仕事が早く終わるの?」と聞くと、父親は「仕事が暇になって早く終わるだ」とそっけない返事が返ってきていました。

早苗の方は、早く帰って来る父親に特に疑問は持ちませんでした。

 

ある日、母親がいつものパートの仕事が臨時休業の為に、数日休みになった時のことです。

夕方に、母親と早苗と姉とで三人で夕食の支度を始めていました。

そこへいつものように早めに父親が酒の匂いをさせながら帰ってきました。

驚いた母親が「あれ? お父さん、どうしただい? 1時間以上も帰りが早いじゃん」

父親は母親の顔を見ると驚いたように「おっ! おお、会社が暇で早く仕事が終わっただ」

そういうと、そそくさと、その場を離れようとしました。

「ちょっとお父さん、何で酒臭いだよ? もう何処っかで呑んできたのかい?」

家庭では暴力的な父親だが、女房には頭が上がらないようだ。

「酒? オラあ呑んでいねえ」

「そんなこたぁねえだろうに、酒臭いよ。お父さん何で会社帰りに、しかもまだ日が高いうちから呑んでくるだよ」

 

母親は早苗たちに聴きました。

「お父さんは、いつも早く帰ってくるだかい?」

「うん、何日か前から早く帰ってきては酒臭くて暴れるの」

 

母親が問い詰めてみたら、父親は半月ほど前から会社を辞めてしまっていて、毎日公園でゴロゴロしていたらしいようだ。そしてコップ酒を買って呑んでは夕方早めに家に帰ってきていたということだ。

 

その夜は、母親と父親で大喧嘩が始まり、茶碗や家具がだいぶ壊れました。

それ以来、父親は毎日ずっと家に居るようになり、早苗たちが学校から帰って来ると、早苗たちの小遣いの入っている財布が空っぽになっていました。

学校へ持っていく教材費すらも、父親が日中に酒を呑むために使ってしまうようになりました。

家計を支えるのは母親のみとなったのです。元々、安給料の父親の収入だけでは、どうしようもなく母親が夜の飲食店でのパートで支えてきた家計が、なお一層厳しくなったのです。

 

 

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神様の遣い(5)

神様の遣い(5)

 

これまでに多くの鑑定に来られた中でも、特に印象的な早苗さん(仮名)をご本人の了解を得て紹介させて頂いています。この方のように、踏んだり蹴ったりの人生を歩まれている方に、「こんな大変な人生は私だけでは無かったんだぁ」と、少しでも励みになればと思っています。

 

前回までの記事

https://ameblo.jp/miya-ritumei/entry-12410464556.html

 

前回の記事は、どうして早苗さんは、「私は何も悪いことをしていないし、人のことを恨んだりもしていないのに、どうしてここまで虐められてしまうの?」と悩み続けてしまった原因がいったい何処に有るのかを、「紫微斗数の命盤」で分析してみました。

 

 

----- お父親さんの事 1 -----

早苗が小学校3年生ごろには、父親は家に帰ってからの酒乱が激しくなっていきました。しかも早苗たち姉妹が学校から家に帰っても母親はまだパートの仕事から帰っていません。

母は夜遅くでなければ帰って来られないので、夕飯の支度だけは済ませてあり、早苗たちが支度をしなくても食べられるようには成っていました。

早苗たちが学校から帰ってから父親も帰ってきます。

父親は仕事から帰ってくる時には、すでにお酒臭いことが増えてきました。酒乱の父親に唯一注意できるのは母親だけですが、その母親は早苗たちが起きている間には帰ってきません。

早苗たちは父親が帰って来るのを待って、夕飯を食べる習慣に成っていましたが、毎晩楽しいはずの夕飯は、酒乱の父親のために、あまり楽しくはなかったのです。

小さな丸い卓袱台を囲んで三人で夕飯を食べるのですが、姉と早苗の食べる様子を見ている父親は必ずといってよいほど、早苗たちに対して文句を言います。

「おい! 茶碗と箸の持ち方が変だろう!」

父親にいつも茶碗の持ち方が変だと云われるのは早苗です。

早苗は同年代の女の子の中でも、かなり小さな身体です。当然、手も小さく大人用の茶碗は片手では持てません。両手で抱えるように持ちながら箸を使って食べるのですが、元々に発達障害を持っていた早苗には箸も旨く持てないのです。ですから、茶碗を落とさない様に食べるだけでも精いっぱいの大変な事だったのです。

当たり前のことですが、ご飯もこぼすし、オカズすらも上手く箸では取れないのです。

すると父親の「バカヤロー」と卓袱台の向こうから拳骨が飛んできます。

ぶん殴られた早苗は仰向けにひっくり返ってしまい、持っていた茶碗もご飯も畳の上に転がり散らばってしまいます。

早苗はひっくり返ったまま、畳の上に伏せて泣き続けるだけです。

 

それでも早苗は成長とともに、ご飯をこぼすことも少なくなり、何とか夕飯は無事に済むようになってきましたが、お酒の入った父親は何かにつけて子供たちにイチャモンを付けます。

夕飯の後に何が気に入らないのか、父親は早苗たちが卓袱台の上に広げた教科書で宿題を始めていましたら。

「おい、邪魔だから片付けろ!」

と、父親は卓袱台の上の教科書を払いのけました。

卓袱台から畳の上に散らばった教科書やノートを、早苗は元通りに卓袱台に上に拾い集めました。

すると、再び怒り出した父親は、教科書を手に持つと両手でバラバラに引きちぎりだしたのです。

分厚い教科書ですが、毎日力仕事をしている父親の両手の力は物凄いのです。一冊の教科書が半分に引きちぎられたのです。

半分にちぎっただけでは気が済まない父親は、今度はちぎれた教科書をさらに広げてちぎり、部屋の中に投げてしまいました。

部屋中にバラバラになった教科書が散らかりました。

驚いた早苗も姉さんも、しばらくは何も言えなく、ただただ怯えているだけです。

しばらくして正気付いた早苗と姉は一緒に散らばった教科書を拾い集めて、ページ順に揃えて、ちぎれた個所を合わせてはセロテープで張り合わせました。そのあいだ中、早苗は涙と鼻汁で顔を濡らし続けていたのです。

この時は普段は厳しい姉さんも一生懸命に手伝ってくれました。

早苗は泣きじゃくるだけで何も出来なかったのです。

 

そして翌朝、早苗は昨夜に父親がバラバラにちぎった教科書を持って小学校に行きました。宿題もまったく出来ていません。

 

授業が始まると先生は、

「はい、それでは昨日の宿題を机に出して」

早苗は困りましたが、セロテープで継ぎ合わせた教科書を机の上に広げました。幾重にもセロテープで修復された教科書は分厚く膨れ上がっています。

手で押さえていないと膨れ上がった教科書は大人しくしていてはくれません。手を離すと風船のように膨らんだままになってしまいます。

それは異常な光景です。

 

宿題も何一つとして出来ていません。

先生が生徒の机の間を回りながら、それぞれの宿題を見て歩きます。

先生が早苗の机の傍まで来るとピタッと止まりました。

「おい、何だこれは?」

先生に問われても何も言えない早苗です。

「お前、教科書を何だと思ってる! 宿題をやるのが嫌だから教科書を破いたのか?」

先生は怒鳴り声を上げ始めました。

「早苗! 立ちなさい。お前という奴は、夏休みのウサギの世話といい、まったくズルい根性の曲がった奴だな、お前に破られた教科書の痛みを、思い知らせてやる!」

そう言って先生は早苗の膨らんだ教科書を手に取ると、早苗の顔を何度も分厚い教科書で叩きました。

早苗は教科書が破れた経緯を話したかったけれど、昨夜の怖い出来事と、目の前の怖い顔をした先生の前では、何も言えなくなってしまいました。

真っ赤に腫れた顔を、涙が止め処もなく流れました。

 

 

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早苗さんの命盤

早苗さんの命盤

 

今から何十年も前の小学校時代の記憶を手繰り寄せている早苗さんの紫微斗数の命盤はどんな風になっているのでしょう。

 

前回までの記事

https://ameblo.jp/miya-ritumei/entry-12409801572.html

 

本日は少し筆休めのつもりで、早苗さんの命盤の分析をやってみたいと思います。早苗さんのご希望で生年月日、出生時刻などは非公開の命盤です。

 

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命宮は「天相星」で遷移宮が「廉貞・破軍」です。

お顔の様子は「天相星」に「廉貞」がプラスした感じです。

雰囲気としては命盤通りに桃花系の雰囲気を醸し出して居られます。

身のこなしや言葉遣いも命盤どおりと感じます。

持って生まれた個性と性格は「生年四化星」の性格と入る宮を考察すれば正確な行動傾向も観えます。

命盤から読み取った早苗さんの性格は、とても穏やかですが、優柔不断な性格が様々なトラブルに遭いやすかったと感じます。

頭脳は良い人です。文藝の才能も趣も豊かな人と感じます。

向学心も旺盛で様々なものに興味を持たれそうです。

スピリチュアルな感性も豊かでしょう。

命盤全体から観て「発達障害」をお持ちと云えます。

重要な、持って生まれた「生年四化星」は1個だけ六内宮(自分の宮)に有ります。それは「化科星」です。

これだけで、早苗さんは「化科星の人」という性格を強めます。

他の生年四化星は3個とも六外宮(他人の宮)です。

生年四化星は六内宮に有るのが、人生を生きて行く上でたいへんに有利です。

 

「生年四化星」は物に例えれば、人生を生きて行く上で役に立つ道具のような物です。この四つの道具がすべて自分の物(六内宮)で有れば、人生の様々な場面でも、自力で何とか出来ると思っても過言ではないでしょう。

 

もし全ての「生年四化星」が他人の宮に入ってしまった人は、どうすれば良いのでしょう?

大切な自分の為の道具が他人の処に有るのです。その道具を生かすのには、その四化星が入っている宮の人に、何とかして貰わなければ成りません。

例えば「奴僕宮」に入っていたならば、「奴僕宮」の人と旨くやって行く必要があります。そうすれば「奴僕宮」の人に助けられて、人生を何とか超えて行かれるという訳です。

 

早苗さんは生年四化の「化禄・化権」が父母宮です。

父母宮といえば「両親・先輩・学校の先生・上司など」です。ここに「化権」は、これらの対人関係で辛いことが起こりやすいです。実際に早苗さんは気性の激しい両親の元で、物心ついた頃から暴言と暴力で泣かされてきました。小学校に入ってからも担任の先生のみならず、他の先生にも怒鳴られ、殴られたり蹴られたりと散々です。クラスで一番に弱弱しくて小柄な女の子が暴力に遭っているのですから、気の毒としか言いようがありません。

 

私が命盤を観て思うには、多分に発達障害の傾向が有ってのことで、酷い目に遭っている訳です。紫微斗数ではどんな原因が有ろうが、「父母宮の関係で辛い」ことが起こると現れているのですね。

父母宮に「化禄」が有るじゃないか? と、思われるかも知れませんが、確かに日本の紫微斗数では「化禄」は絶対に良好などと広く広まっています。「命宮に化禄は幸せ!」 と書籍にも謳われていますが、しかし、これまでに鑑定した多くの、命宮に「化禄」の人でも散々の人生の人は少なくないです。

結論から言えば「化禄は絵に描いた餅」です。見えても実態は無い。

欽天四化の解釈では「化禄は虚星」です。

ですから、早苗さんの父母宮の「化禄」は「化権」と同宮ですから、ほぼ「化禄は化権に馴染む」と思ってもよいです。つまり、この場合の「化禄の効果は無い」と解釈してもよいでしょう。

早苗さんの父も母も激しい性格です。欽天四化では父母宮は父親、兄弟宮は母親、早苗さんの父母宮も兄弟宮にも「擎羊・陀羅」の大凶星の双星が入っています。

さらに、一人しかいない姉も激しい性格です。

命盤は如実に現象を表しています。

 

夫妻宮も問題が出ています。

離婚の象意です。しかも「絶対」です。

子女宮も心配です。子女宮には「生年化忌」が入って居ますから、絶対に子供さんは授かりますが、問題有りということです。

しかも【化忌】の作用は「囚われ、束縛、執着、苦労」ですから、現実を表しています。でも、子女宮はある意味で自分の配下にも出来るので、子女宮に化忌で集まるものを早苗さんが利用してもよいと思います。

言い換えれば、早苗さんは子供に執着し「子離れが出来ない」訳ですが、子供さんが恵まれれば、お母さんも助かるとも言えます。

お母さんの散々の人生は、化忌の子供さんをしっかりフォローして行けば自分も救われると思います。

一つ心配は、子女宮の【C-B】です。子供さんに何か有る?

そうです。それを一番心配しています。串聨はしていますが。

息子さんの命盤はすでに調べて有ります。

そうです。息子さんの中年期に、ある出来事が起こります。それをすでに早苗さんには伝えてあります。

お母さんは息子さんの中年期に起こる「必定」を避けさせるための努力が必要で、その必定を超えたなら、お母さんも幸せになるでしょう。

 

兄弟宮も奴僕宮も良くありません。

早苗さんの健康問題が55歳、65歳の大限(10年運)で深刻にならないようにしなければ成りません。

病気の象意は疾厄宮と対宮で観ても良いです、「先天的な自己免疫系の病気・難病・精神的な疾患・アレルギー・事故・怪我・手術」など病気の百貨店になりそうです。これらの病のほとんどは長期に渡る強いストレスが原因と云えます。(すでに、これらの疾患は深刻な状況です)

 

早苗さんの「来因宮」は遷移宮ですから、災難には要注意ですが、すでに幼少期から頻発しています。生涯落ち着かない人生になるでしょう。

外出も多い人生ですが、必要以上に外出しない方が良いと、私は思っています。一歩外に出たら常に注意です。出会う人間にも注意です。大人になっても要注意です。

 

仕事の面でも苦労が有ると云えます。出来ることなら専業主婦が良いのですが、離婚してしまう確率が高く、命盤に現れている現象が現実化しそうです。

田宅宮も悪く、不憫な家庭に生まれ、結婚後の家庭も不憫になりそうです。

 

生涯に渡って精神面でも辛いことが続きそうです。

 

冒頭でも記述したように「化科のみの人」は人生の生き方が限られてしまいます。趣味や芸術、文化、文藝、教育などの分野で生きるがよいですが、穏やかな人たちの中で過ごせることが大切と思います。

 

早苗さんの命盤は厳しい現実を忍ばせています。

本人の穏やかな性格からすれば信じられないような状況ですが、これも持って生まれた宿命なのですね。このような人生に成るためには、何か必要が有って生まれて来たと思います。その役割については本人も知りません。

生まれたことに全く意味を感じない、自分は不必要な存在と思うのも無理もないことです。

しかし、神様は必要が有って、この世に送り出して来たのだと、私は確信を持っています。私には、それが観えています。

 

 

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神様の遣い (4)

神様の遣い (4)

 

前回の記事は、小学生の早苗さんがお友達の誕生会に招待され、楽しみにしていたけれど、お母さんに「絶対に行ってはダメ」と云われ落ち込んでしまいました。お誕生会にはクラスの全員が参加したのに、早苗さんは一人参加しなかった訳です。その結果、早苗さんはクラスでみんなの話題に加わることが出来なくなっていって、次第に孤立していったという事でした。

https://ameblo.jp/miya-ritumei/entry-12407987756.html

 

------ 夏休みの出来事 ------

早苗が小学校3年生の夏休みのことでした。

小学校ではウサギを数匹、網を張った小屋で飼育していました。

普段の世話は2~3人の生徒たちが当番制でウサギ小屋の掃除、水や餌やりをしていました。ウサギの世話が出来るようになるのは三年生からです。

三年生になったら、上級生と先生の指導でウサギ小屋の掃除の仕方、餌やりの仕方を覚えます。早苗も三年生になりましたから、4月から他の同級生と一緒にウサギの世話を覚えました。

動物好きの同級生はキャーキャー言いながら「可愛い~」と小屋の中に入ってウサギを抱っこしています。

でも早苗は、そんな同級生をウサギ小屋の入り口から眺めているだけです。

ウサギ小屋の中に入ろうとしません。同級生にウサギを「早苗ちゃん、ウサギを抱っこしてごらん」と手渡されても、手を出そうとしません。

早苗は絵本に出てくるウサギも熊さんも大好きです。絵本の動物を観ては「可愛い~」と嬉しそうにしている早苗ですが、何故かウサギ小屋のウサギには近づけないのです。

実は、早苗には3歳ごろ恐ろしい思い出がありました。

まだ物心ついてヨチヨチ歩きの頃に、近所の放し飼いの犬に足を噛付かれて、何針も縫う大怪我をしました。それ以来、本物の動物は怖くなってしまったのです。絵本に出てくる動物はとても可愛いのに、本物はダメなのです。ペット屋さんのハムスターは手に取ることが出来ましたが、それでも手に取ったハムスターが、突然暴れると投げ出してしまうほどの臆病になってしまっていたのです。

 

この日もウサギ小屋の当番で同級生と小屋に入ろうとしましたが、早苗は入り口で眺めているだけです。それでも同級生はウサギ大好きですから、さっさと餌やりをやっています。

「早苗ちゃん、掃除手伝ってよ」と同級生に促された早苗は、恐る恐るウサギ小屋に入って藁くずを片付けは始めました。

早苗の足元にウサギが寄ってきます。

本物のウサギもよく眺めれば可愛いものです。早苗は思わず「可愛い~」と声を上げますが。抱き上げることはとてもできません。

 

そして夏休みが来ました。

早苗のウサギ当番はクラスのB子と一緒に夏休み中やることになりました。

しかし、早苗はB子と一緒にやることが心配になりました。

B子はクラスの中ではずるい性格で有名でした。

早苗は、「よりによってB子と一緒だなんてヤダなあ」と思いました。

早苗はB子には普段から何も言えない、出来れば関り会いたくない相手です。一番嫌いなタイプです。

早苗は友達同士でも何かあれば、早苗が何でもしてあげてしまう方に回ってしまう、損な役割ばかりすると思っていました。

B子は、その点は早苗と真逆です。B子は自分では何もしないで、何でも人にやらせて威張っているタイプです。

 

そんな嫌な思いが的中した日がやってきました。

夏休みが始まって一週間目のある日、早苗とB子のウサギ小屋の当番の日です。早苗は約束の小学校の校庭でB子を待ちます。

しかし、時間になってもB子は現れません。今のように携帯電話も無い時代です。そもそも家に電話も無い所もありました。

早苗はB子を待ちましたが、30分も過ぎてしまいました。不安になった早苗は迷いました。B子を呼びに行くにも、ずいぶんと遠い所です。

仕方なく早苗は職員室にウサギ小屋の鍵を貰いに行きました。

学校は夏休みですから廊下も職員室もシンとしています。真夏なのに静かで何となく冷んやりした、ちょっと薄暗い廊下を進んでいくと職員室が有りました。職員室にはクラスでも有名な怖い中年爺じいの先生が一人机に座って新聞を広げて読んでいます。

早苗は恐る恐る中年爺じいの先生の前に行きました。椅子に座っているのに先生は、見上げるような怪物に見えました。

「あの…、ウサギ小屋の鍵が欲しいですけど…」

早苗はモジモジと小さな声で言いました。

「何! 何が欲しい?」

先生は、「何の用だ!」、と云わんばかりに大きな声で聴き返してきました。早苗はもう一度、前より大きな声でゆっくりと

「うさぎ小屋の…、鍵が欲しいです」

「そっか、ウサギ小屋の鍵だな。お前が今日はウサギ小屋の当番か?」

「はい、そうです」

「でも、ウサギ小屋の当番は二人でやるんだろ? お前独りやるのか?」

早苗はB子が待っても来ないことを言いたくて、喉までそのことが出かかったけれど、結局は何も言えなくて黙ってしまっていました。

「お前まだ三年生だろ、独りで勝手にやってはダメだ。先生が就いていくから先にウサギ小屋に行って作業を始めていなさい」

そう言って先生はウサギ小屋の鍵を早苗に手渡しました。

 

早苗は早々にウサギ小屋に向かっていきました。

ウサギの餌は粒に成っている物で、大きめのカップのような容器に山盛りにして、小屋の入り口のカギを開け中に入っていきました。

ウサギ小屋の入り口を開けている間に、ウサギが外に出て行っては困りますから、早苗は素早く小屋に入り戸を閉めました。

そして振り向いたら何匹もいるウサギたちが、餌を欲しがって一斉に早苗に向かってきました。しかし早苗にはウサギが突進して来ると感じたのです。

慌てた早苗は手にいっぱい持っていたウサギの餌を、カップごと放り投げて、小屋の入り口に身を縮めてしまいました。

金属製のカップは音を立ててウサギ小屋の中を転がり、山盛りの餌は小屋中に散らばってしまいました。

「こら! お前、何やってるんだ、この野郎!」

ウサギ小屋の外から大きな怒鳴り声が聞こえてきました。

その怒鳴り声に再び驚いた早苗は、恐怖で小屋の隅っこに座り込んでしまいました。ウサギたちは散らばった餌を拾うように食べています。

「先生は見たぞ! お前は何という悪ガキだ、独りでやるからって出鱈目は先生は絶対に許さん、小屋に散らばった餌を全部拾い集めなさい」

早苗は涙を流して小屋の隅に小さくうずくまるばかりです。

「こらっ! 早く餌を拾わんか! 拾い集めなかったら午後までお前を小屋から出さんからな、昼に成ったらお前は自分でぶち撒けた餌を拾って食え」

先生はそう言ってウサギ小屋の入り口のカギを外から掛けてしまいました。

 

恐怖で何も出来なくなった早苗をしり目に、先生は何処かに行ってしまいました。早苗は、このままずっとウサギ小屋から出して貰えないと思いました。

早苗は、藁の間に散らばった餌を食べるウサギたちを見ながら、ずっと泣き続けていました。

 

どのくらい時間が過ぎたのでしょうか。

ウサギ小屋の外から声がしました。

「お前の今日の悪態は受け持ちの先生に言うからな、そんないい加減な奴は受け持ちの先生に言って、思いっきり懲らしめて貰わなければならん」

いつしか、何処からか戻ってきた中年爺じい先生がウサギ小屋の鍵を開け始めていました。

「早く出てこんか。もう一人の当番の生徒は、お前がちゃんと呼んで一緒に来なきゃならん、勝手に一人で来て出鱈目をしようたって、先生は許さんからな」

早苗は真っ赤に泣きはらした、ウサギのような眼をして家に帰って行きました。家に帰っても誰もいないのです。

今日の恐ろしい体験を誰に話すことも出来ません。

クラスで孤立してきた早苗にとって泣き面に蜂。踏んだり蹴ったりの出来事として生涯忘れられない心の傷になってしまいました。

早苗 8歳の夏の出来事でした。

 

 

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